2020東京オリンピックへ始動

エース兼主将の田中和仁が引退し、全日本シニア体操競技選手権大会の団体総合で8年ぶりの優勝など、徳洲会体操クラブにとって節目となった2016年だが、17年は、20年開催の東京五輪へ向け始動する年となる。ホープとして、とくに活躍が期待される武田一志、岡準平、長谷川智将の〝若手三銃士〟に東京五輪を見据えた決意を聞いた。

羽ばたけ! 若手“三銃士”

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  • 岡準平おかじゅんぺい
    1993年生まれ、熊本県出身。160㎝55㎏。得意種目:あん馬。主な実績:15年、全日本体操団体選手権優勝(日本体育大学)
  • 武田一志たけだかずゆき
    1992年生まれ、群馬県出身。160㎝58㎏。得意種目:つり輪。主な実績:14年、韓国・仁川アジア大会団体金メダル、つり輪銀メダル
  • 長谷川智将はせがわともまさ
    1993年生まれ、福岡県出身。167㎝60㎏。得意種目:あん馬。主な実績:14年、韓国・仁川アジア大会団体金メダル。15年、世界体操競技選手権(英国グラスゴー)代表入り

―あらためて16年を振り返ると?

武田 目標に届かないことが多く、苦しい1年でした。目標を下げるわけにもいかず、正直、逃げ出したいと思ったこともありました。

 社会人になり、試行錯誤の1年でした。とくに難しかったのは試合間の調整。学生の頃は春の大会(天皇杯、NHK杯、全日本種目別)の後、8月にメインの大会(全日本学生体操競技選手権大会)を迎えます。社会人は6月の全日本種目別の後は10月の全日本シニア。約4カ月と長期間の調整は難しかったですね。さらに全日本シニアの翌月には全日本団体が迫り、休養すべきか、練習すべきか手探りでした。

長谷川 リオ五輪に出られず、すごく悔しい1年でした。また社会人となり、練習の環境に合わせるのが大変でした。午前、午後と練習するため体力、集中力を維持するのが厳しかったです。

―東京五輪までに大事なことは?

武田 開催年に突然、代表に選ばれるのは難しいので、早くから代表に選ばれ続けることが大切だと思っています。その意味ではスタートとなる17年が大事になるでしょう。

 自分も17年から代表になり続け、見ている人から「あの人なら大丈夫」と信頼されるような選手になりたいです。

長谷川 けがで代表を外れ16年のリオ五輪に出られなかったので、体の管理をしっかり行いたい。生活習慣もそうですが、とくに練習前後のストレッチが大切。自分を管理できれば、きちんとした練習が行え、結果も出ると思います。もうひとつは慢心しないこと。父によく「勝って兜(かぶと)の緒を締めよ」と言われてきました。勝っても「喜ぶのは今日まで。ひもを解いたら切られるぞ」と。地に足を付け、気を抜くことなく過ごしたいと思います。

会心の演技ができた時に行う長谷川の“寿司ポーズ”。このポーズが多く見られるほど、徳洲会体操クラブの勝利が近づく

会心の演技ができた時に行う長谷川の“寿司ポーズ”。このポーズが多く見られるほど、徳洲会体操クラブの勝利が近づく

―17年の豊富を。

武田 今年から個人総合に参加する予定です。つり輪以外に平行棒も得意種目になりそうな手応えをつかんでおり、跳馬を強化すれば、ゆか、鉄棒は失敗せずに演技できる種目なので、個人総合でも上位に食い込めると思います。どの大会でも2番以内が目標。内村航平選手を脅かす存在になりたいです。また、徳洲会体操クラブの不動のエースを目指します。徳洲会のエースになれなければ日本、世界で戦えないと思っています。もし17年にきちんとできなければ……今後の体操人生はないなというくらい強い覚悟で臨みたい。

 五輪の翌年はルールが改正され、うまく対応できる選手が少ないだけに、17年は多くの選手にチャンスがあると思います。そこで、しっかり点数を残していきたいですね。年齢的に最後のチャンスとなるユニバーシアード(8月19~23日・台湾)への出場も考えています。種目では、ゆかと平行棒に力を入れたい。

長谷川 あん馬では優勝し続けたいと思っています。あん馬は地味な種目ですが、自分の演技はダイナミックと言われるので、そこを見てほしい。東京五輪は代表が4人と、リオ五輪から1人減る可能性があるので、あん馬以外にもゆか、跳馬、平行棒の底上げを図らなければなりません。

手記―主将・亀山耕平 世界を魅了するクラブへ

東京五輪出場を目指す徳洲会体操クラブ(左から武田、金子健三、岡、亀山主将、長谷川、齊藤優佑、山本雅賢、瀬島龍三)

東京五輪出場を目指す徳洲会体操クラブ(左から武田、金子健三、岡、亀山主将、長谷川、齊藤優佑、山本雅賢、瀬島龍三)

2016年は悔しい1年だった。最大の目標だったリオ五輪出場が果たせず、選考会直後は引退しようと考えていた。しかし、時間が経つにつれ、自信はあるのに勝てないことへの怒りや悔しさが芽生え、「勝てるところで勝ちたい」との欲が大きくなっていったことから、現役続行を決めた。

(田中)和仁さんから主将を継ぎ、成長できた1年だったとも思う。主将という立場をふだんから強く意識することはないが、リーダーとして、まとめ役をはじめスタッフと選手のパイプ役、何より後輩を育成できる主将でありたいと考えている。

いよいよ東京五輪に向けた戦いが始まる。団体では日本一になること。個人でも総合、種目別問わず、常にトップクラスにいなければならない。自分も、あん馬1本に絞っている以上、あん馬で勝ち続けるしか代表への道はない。五輪まで4年あるが、スタートダッシュを図る意味でも、17年は大変重要な1年になる。

「世界を魅了」――。これは当クラブが掲げる17年のスローガン。17年の1年、日本はもちろん、世界でも認められる美しい演技を心がけ、1人でも多く代表選手を輩出するとともに、スポーツ特有の面白さや感動を伝えたい。

応援・支援してくださる方の期待に応えるためにも、クラブが一丸となって取り組む覚悟だ。

まず日本一目指し強化 米田監督インタビュー

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徳洲会体操クラブの監督として、2016年、初めてオリンピックに挑戦した米田功監督。13年に監督に就任し、最大の目標としていた五輪を終えた今、何を思うのか。この4年間を振り返るとともに、“第2章”への決意を語ってもらった。

徳洲会体操クラブの監督として過ごした4年間は、一言でいえば学びの多い4年間でした。4年前には見えなかったことや、わからなかったことが、今は見えたりわかるようになったりして自分の成長を実感しています。

具体的に反省点を挙げると、1つは当クラブの活動拠点である徳洲会スポーツセンターかまくらの運営全体に腐心してしまったこと。決してクラブの強化を疎かにしていたわけではありませんが、児童対象の体操教室などを開いている「徳洲会かまくら体操クラブ」を含め、センターのマネジメント全般について考えることが多かった。

もう1つは世界を必要以上に意識してしまったこと。ほかのチームが強いこともあり、いかに当クラブの選手を世界に送り出すかに目を向けがちだったように思います。

これらに共通する背景として「自分の過去・経験にとらわれ過ぎた」ことが挙げられるのかもしれません。私が現役の頃は少ない人数でも勝っていたので、いつしか「少数精鋭でもいい」、「国内で勝つことより、世界で活躍することが大事」と考えてしまっていました。今は当時と状況が異なり、国内でなかなか勝てない。まずは日本一、その後、世界へとステップアップしていきたい。

意識付けの研修も実施

16年10月の全日本シニアで8年ぶりに優勝した際、いろいろな方が「おめでとう」と祝福してくださいました。やはり多くの方が当クラブの活躍を望んでくださっていると実感し、今後はチームを強化するための方策を積極的に打っていきます。

一例を挙げれば、選手数をもう少し増やしたり、有望な選手を獲得したりするなど層を厚くしたい。たとえば全日本シニアの団体総合は6人で戦うので、1、2人けが人が出ると、あっと言う間に戦えなくなります。アクシデントが起こっても戦える体制を築いていきたいですね。

また、選手個々の意識付けも大切なので、目指すべき方向性を固めるための取り組みを行っています。そのひとつがチームビルディング研修。16年12月に実施したのをふまえ、チームの理念やビジョンを掲げることにしました。

目指すは「最強で最高のチームづくり」。2016年に得たさまざまな経験を生かし20年の東京五輪を迎えたいと思っています。17年も引き続き応援をよろしくお願いいたします。

東京五輪へ選手を導く力強い声援を!

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2017年の主な大会スケジュール(予定)

4月7~9日 : 第71回全日本体操競技選手権大会
(東京体育館・東京都)

5月20~21日 : 第56回NHK杯体操
(東京体育館・東京都)

6月24~25日 : 第71回全日本体操競技種目別選手権大会
(高崎アリーナ・群馬県)

10月27~29日 : 第50回全日本シニア・マスターズ体操競技選手権大会
(四日市市中央緑地体育館・三重県)

11月24~26日 : 第71回全日本体操競技団体選手権大会
(高崎アリーナ・群馬)

徳洲新聞2017年(平成29年)1/1  NO.1064 より