「徳洲会体操クラブ」創部以来の快挙に日本列島沸く
パリ五輪で岡慎之助が個人・団体総合2冠
杉野正尭主将も大きく貢献し団体金メダルを手に!
徳洲会体操クラブの岡慎之助と杉野正尭主将は、フランス・パリで開催されている夏季五輪の体操男子に日本代表として出場、岡は団体総合と個人総合で金メダルの2冠を達成した。クラブ創設以来、所属選手が五輪の個人総合で優勝するのは初。弱冠20歳の選手が大輪の花を咲かせた。杉野は団体総合で3種目に出場し、日本の2大会ぶりの優勝に大きく貢献した。両選手ともに五輪出場は初めて。個人総合の決勝は8月1日深夜(現地時間7月31日夕方)に行われた。岡は2種目めのあん馬でトップに立ち、4種目めの跳馬で一時順位を3位にまで下げたが、5種目めに得意の平行棒で15.100の高得点をたたき出し、再びトップに。
最終種目の鉄棒でも安定した演技を披露し、2位につけていた中国人選手の逆転を許さなかった。試合後のインタビューで岡は「練習の成果が金メダルにつながり、とてもうれしいです」。愛らしい笑顔はSNSなどで“岡スマイル”と話題を呼んだ。
一方、団体総合の決勝は7月30日深夜(現地時間29日夕方)。今大会では1チーム5選手のうち各種目で3選手が演技し合計点を競った。岡は、ゆか、つり輪、平行棒、鉄棒、杉野は、あん馬、跳馬、鉄棒に出場し、すべて14点台をマークするなど終始安定した演技を披露。
日本は、5種目めの終了時点でトップの中国に3点以上離される苦しい展開だったが、最終種目の鉄棒で岡が14.433、杉野が14.566の高得点をたたき出すなどして大逆転、日本は2大会ぶりに頂点に立った。徳洲会体操クラブ所属選手が団体総合に出場し金メダルを獲得するのは、米田功監督が現役選手だった2004年のアテネ大会以来、20年ぶりの快挙だ。
大きな試練を乗り越えて大輪の花 徳田・名誉理事長に代表内定報告
クラブの歴史を変えるほどの活躍ぶりを見せるふたりだが、岡も杉野も決して順風満帆な選手人生ではない。岡は一昨年、試合中に前十字靱帯断裂と半月板損傷の大けがを負い、全治8カ月と診断。ほぼ1年間、体操ができなかった。それでも五輪出場を信じ、筋力トレーニングや読書に励むなど体だけでなく精神面も鍛えた。昨年、第10回アジア体操競技選手権大会(6月、シンガポール)の個人総合で優勝し復活。
今年は「勝つ」をテーマに掲げ、第63回NHK杯で優勝、初の日本代表入りを果たし五輪出場の切符をつかんだ。五輪開幕前に一般社団法人徳洲会東京本部を訪れた際、岡は「団体と個人で金メダルを狙います」と宣言、有言実行を果たした。
杉野は前回の東京五輪で代表入りを狙っていたが、最終種目の鉄棒でミスが出て0.1差で落選。目前でチャンスを逃した悔しさをバネに、その後、米田監督と練習計画を何度も練り直しながら臨んだ結果、2022年、23年全日本シニア・マスターズ体操競技選手権大会の個人総合で連覇を果たすなど、着実な成長を見せた。
今年の代表選考会で高難度の技を組み合わせた鉄棒とあん馬の演技構成などが評価され、スペシャリストとして悲願の日本代表入り。代表内定後、岡と訪れた東京本部で金メダルを持って帰国する意欲を見せていた。
団体・個人総合を終え、8月1日に米田監督に取材すると「過去や未来にとらわれず、目の前のことに愚直に集中したことが結果につながったと思います」と、ふたりを評価。「岡は緊張感あるなか、これまでミスの多かったあん馬でも集中力を切らさず、しっかり演技できていました。杉野はスペシャリストとして取るべきポイントを確実に獲得、思いきった演技が印象的でした」とたたえた。
また、米田監督は「徳田虎雄・名誉理事長が逝去される前に岡、杉野と3人で面談し、代表入りを直接報告することができました。徳洲会を挙げサポートしていただける環境のありがたさを実感したことが、力になったようです」と吐露。「徳洲会グループの皆さんに良い結果を伝えることができ、本当にうれしいです」と目を細めた。