田中和仁選手インタビュー ~ロンドン五輪を振り返って~
個人総合「鉄棒」には満足 リオオリンピックを目指す
団結力あるチームだから銀メダルを獲得できた
銀メダルおめでとうございます。改めてロンドンオリンピックを振り返ってどんな思いでしょうか。団体戦からお聞かせください。
田中 予選では、トップバッターだったので自分がチームに良い流れや雰囲気をつくらなければいけないと思っていました。ところが、いきなり失敗をしてしまい、そのせいもあってか1種目目でほかの2人もミス。入り損ねた感がありました。緊張というよりも、金メダルを目指すなかで気合が高ぶりすぎていた。(内村)航平も言っていましたけど、皆いつもの演技ができていませんでした。
大会前のチームの雰囲気や各選手の調子はいかがだったのでしょうか?
田中 どの選手も動きにキレがあったし、調子自体は悪くありませんでした。正直、本番であそこまで崩れるとは誰も予想していなかったと思います。ただ、とまどった部分があるとすれば、実際に使用した器具の具合が練習で使っていたものと違ったこと。本番を想定して国内外の合宿ではオリンピックと同じメーカー製の器具を使用していました。しかし、鉄棒のバネの跳ね返りや跳馬のロイター板の固さ、床の跳ね具合などが行く先々で異なるんです。オリンピックでも練習会場と本会場で違っていました。
決勝で4位と表示された瞬間、どんな思いが?
田中 頭が真っ白になりました。何も考えられず、航平の下り技が認定されていないというところまで気が回っていませんでした。途中で「審議中」の表示に気づき、しばらくしてから「下り技が認められていないので抗議した」と聞きました。
抗議が認められ2位になった時は?
田中 その瞬間は素直に喜べませんでした。一度順位が出て、イギリスとウクライナが喜んでいる姿を見ていたので……。
個人戦について、お聞かせください。
田中 団体同様、個人総合・種目別平行棒でも満足のいく演技があまりできませんでした。たくさんの方々に応援してもらったのに、期待に応えられず残念です。ただ、悔しい気持ちはありますが、後悔はしていません。
今大会では中国の勝負強さが印象的でした。中国の選手はいずれもスペシャリストでしたが、オールラウンダーよりも有利なのでしょうか。
田中 確かに、オールラウンダーに比べれば特定の種目に対する練習量は違うかもしれません。しかし、僕はどちらが有利かという目では見ていません。中国の選手は、ここぞという時に力を発揮できる平常心や集中力がすごいと思っています。
キャプテンとして今回のチームをどう見ていますか?
キャプテンとして今回のチームをどう見ていますか?
史上初の3きょうだい出場―「とても楽しい大会でした」
大会中、きょうだいで話す機会はありましたか?
田中 弟とは同じチームということもあり話す機会があったのですが、妹とはほとんどありませんでした。家族では、父と現地で一度だけ話すことができました。妻とはメールや電話で毎日連絡を取っていました。失敗した時もメールで「最後まで笑顔でがんばって!」などと励ましてくれました。
選手村の印象は。
田中 国ごとの建物があって、ちょっとした町ですね。本当に広くて全部は回りきれませんでした。選手村で大変だったのは食事。いろいろな国の料理を出すコーナーが設置されているものの、味付けが合わないというか、たとえば肉は焼いただけで味がほとんどない(苦笑)。選手村のそばに国立スポーツ科学センター(JISS)が運営しているマルチサポートハウスがあり、そこで和食を提供していたり、炭酸泉(お風呂)が設置されていたので、そういうのを利用しながら体調管理に気を使いつつ20日間ほど過ごしました。
ほかの競技の選手と交流する機会はありましたか?
田中 そもそもあまり知らないんです。航平や(加藤)凌平は「ボルトに会いたい」と言っていましたが、結局会えず。女子バレーボールの木村選手と挨拶を交わしたくらいです。
オリンピックの一番の思い出は?
田中 個人総合の鉄棒。今回、一番満足できた演技でした。また、オリンピックに初めて、しかもきょうだい3人で出場することができたことも大切な思い出です。いい経験だったし、とても楽しい大会でした。徳洲会の皆様には、たくさんの応援をいただき感謝しています。
オリンピックという目標の1つをクリアしました。今後のビジョンを教えてください。
田中 やれるところまで現役を続けようと思っています。2016年のリオオリンピックを目指しています。