代表の座つかむのは? クラブ復活へ分水嶺の年

東京五輪見据えた争い本格化

2020年の東京五輪まで2年半。体操界では代表の座を巡る熾烈な戦いが、本格化していく。母国での開催だけに、徳洲会体操クラブは1人でも多くの選手を日本代表に輩出したいところだが、そのためには代表入りし続けることが肝要。とくに18年は国際大会が複数開かれ、代表入りのチャンスが増える。19、20年と国際大会が少ないことを考えると、今年はクラブの行方を占う重要な1年になりそうだ。選手らは昨シーズンをふまえ、どんな思いを胸に秘めているのか―。

東京五輪出場を目指す亀山。主将として「佐藤とともにクラブを引っ張っていきたい」

東京五輪出場を目指す亀山。主将として「佐藤とともにクラブを引っ張っていきたい」

「観客の方にベテランの安定した演技を見せたい」と齊藤

「観客の方にベテランの安定した演技を見せたい」と齊藤
 

日本代表候補に初めて選出された佐藤。亀山とともにチームをけん引

日本代表候補に初めて選出された佐藤。亀山とともにチームをけん引




膝の故障から復帰し、演技を披露する瀬島

膝の故障から復帰し、演技を披露する瀬島

日本代表入りを狙う武田は「今季は6種目の力の配分がポイント」

日本代表入りを狙う武田は「今季は6種目の力の配分がポイント」

金子は大けがから本格復帰し日本代表候補を目指す

金子は大けがから本格復帰し日本代表候補を目指す




「18年は責任感をもって取り組みたい」と長谷川

「18年は責任感をもって取り組みたい」と長谷川
 

岡は「1年をとおしてけがをせず、ひとつでも多くのタイトル獲得を」

岡は「1年をとおしてけがをせず、ひとつでも多くのタイトル獲得を」
 

18年は日本代表候補入りを目指す川本。力強いつり輪の演技が持ち味のひとつ

18年は日本代表候補入りを目指す川本。力強いつり輪の演技が持ち味のひとつ




「目標はNHK杯で12位以内。鉄棒が得意なので離れ技を見てください」と丁子

「目標はNHK杯で12位以内。鉄棒が得意なので離れ技を見てください」と丁子

まず2017年を振り返ると、徳洲会体操クラブにとって前半戦と後半戦で明暗が分かれた年となった。前半の個人戦(全日本体操個人総合選手権、NHK杯体操、全日本体操競技種目別選手権大会)で武田一志、長谷川智将、亀山耕平主将、佐藤巧が好成績を収め、武田、亀山、佐藤が日本代表候補入り。亀山は日本代表選手として世界体操競技選手権大会(カナダ)に出場した。長谷川はユニバーシアード(台湾)の代表に選ばれ、団体で金メダルを獲得した。

ところが、後半の団体戦(全日本シニア・マスターズ体操競技選手権大会、全日本体操競技団体選手権大会)で、いずれも表彰台を逃した。安定した戦いぶりが見られなかったのは、けがの影響が少なくない。齊藤優佑は関節遊離体による足首の故障で「本来は試合に出られない状態」(米田功監督)のなか演技。岡準平は16年に負った肩のけがを引きずった状態でシーズンに臨んだ。

瀬島龍三もシーズン開幕直前に膝を痛め、前半戦を棒に振った。金子健三は16年に前十字靭帯(じんたい)断裂で手術。復帰に向け意気込んだもののブランクは大きく、思うような演技ができずに苦しんだ。武田は全日本団体で大会前に練習で手首を痛め、同大会を欠場した。

こうしたチーム状況のなか、米田監督は今季を「東京五輪に向け、とても重要なシーズン」と指摘。「18年は世界選手権、アジア大会、種目別W杯(東京五輪予選)、など国際大会が多く開かれます。その都度、代表が選ばれ、例年、日本代表の枠は5人ですが、今年は11人になる見込みです」。19年は世界選手権のみ、五輪開催年の20年は国際大会が開かれないことから「後から代表に入るのは難しい。今年から入り続けることが大事です」(米田監督)と強調する。

では、今季の戦略をどう描いているのか。まず故障者の復調。ここにきて、瀬島、金子、岡に回復の兆しが出てきた。また、各選手の成長にも期待。入職1年目の丁子大樹、川本稜馬は学生時代との環境の違いに当初はとまどうこともあったが、秋以降は慣れ、演技が安定。技の難度を上げるなどして、ともに日本代表入りを目指す。

技術だけでなく、精神面の成長も垣間見える。練習や試合に臨む際、これまでは監督・コーチ主導だったが、「自分たちで考えて行動する風土づくりを」(米田監督)と、17年秋から選手主導に変更。監督・コーチはサポート役に回った。

亀山と佐藤を中心に選手同士が積極的に話し合い、チーム全体に自主性が出てきたという。「良いと思うことを言葉にするようになりました。チームとして強くなりたいし、チームが強くなれば個人も強くなるので」と佐藤。瀬島も「つねに一番乗りで練習を始めるようになりました」と行動の変化をアピールする。米田監督も「チームの雰囲気が変わりつつあります」。

最後に、新戦力の獲得だ。18年4月に新たに2選手が入職予定で、チーム全体の底上げを図る。もちろん、19年以降の構想も練っている。そのひとつが「魅力あるクラブづくり」だ。狙いは“白井世代”の獲得にある。現在、男子体操界で勢いづいているのが大学生。とくに白井健三選手(日本体育大学)を筆頭に、大学3年生に逸材がそろっており、白井世代として注目を集めている。米田監督は「徳洲会を選んで良かったと言ってもらえるような魅力あるクラブづくりを進めていきます」と意気込みを隠さない。

どれだけ大事な1年か

肝に銘じてしっかり戦う

米田功監督

米田功監督

2018年は当クラブにとって本当に重要な年。代表に入ればトップアスリートに囲まれた環境で練習し、国際試合も経験できます。一方、選ばれなければ所属クラブで練習するだけなので、両者に差が生まれるのは想像に難くありません。早めに代表の席を確保すれば、それだけ東京五輪に近付けると思っています。どれだけ大事なこの1年かを選手・スタッフ一同肝に銘じ、臨む覚悟です。

選手は危機感や気迫をもっと!!

~コーチ就任から1年~

田中和仁コーチ

田中和仁コーチ

コーチに就任し1年が経過しました。まだまだ勉強中で難しいと感じることがありますが、コーチとしての自分の武器を探りつつ、日々、楽しんでいます。チームを見て感じるのは危機感や気迫が希薄ということ。自分が現役の頃は、個人総合や年下の選手には絶対に負けないと思って取り組んでいました。ルールや環境が違うので、一概に比較はできませんが、選手にはそうした思いをもう少し前面に出してもらいたいです。

選手を勇気づける熱い声援を!

2018年の主な大会スケジュール(予定)

20180101-1115-013

4月27日~29日 : 第72回全日本体操競技選手権大会(東京体育館)

5月20日 : 第57回NHK杯体操(東京体育館)

6月30日~7月1日 : 第72回全日本体操競技種目別選手権大会(群馬県・高崎アリーナ)

8月18日~9月2日 : 第18回アジア競技大会(インドネシア・ジャカルタほか)

9月15日 : 第51回全日本シニア・マスターズ体操競技選手権大会(北九州市立総合体育館)

10月25日~11月3日 : 第48回世界体操競技選手権大会(カタール・ドーハ)

11月22日~25日 : FIG種目別ワールドカップ(ドイツ・コトブス)

11月24日~25日 : 第72回全日本体操競技団体選手権大会(群馬県・高崎アリーナ)

徳洲新聞2018年(平成30年)1/1  NO.1115 より